再履ウム

再履、留年、そして退学。

さよならカードショップ

※この文章は3分で読めます。

※フィクションです。

高校生のときのことです。卑屈で根暗な僕にも、仲良くしてくれる同級生がいました。そんな彼らと「仲良しグループ」として徒党を組み、毎週のように秋葉原や中野を闊歩しました。そして、サイゼリヤのドリンクバーで粘りながらソシャゲに勤しみ、カードショップでカードゲームに勤しむのです。そんな、カーストこそ低くも充実した日々を送っていました。彼らは一生の友人だ!そう信じて、やみませんでした。

 

高校卒業後、僕は大学の入学が一年遅れてしまいましたが、それでも彼らは僕を受け入れてくれました。入学してからというものの、徹夜で高田馬場で飲み明かしたり、麻雀に明け暮れたり、2週間かけて鉄道で日本を縦断したりしました。やはり、彼らは一生の友達だと信じてやみませんでした。

 

ところが、おかしいのです。僕たちはちょっと前までカードショップにいて、サイゼリヤにいました。ところが、僕らは渋谷のダーツバーで遊んで、早稲田の居酒屋で飲んでいるのです。ついさっきまでカードショップにいた僕たちは、なぜか、本当ならば不相応の場所にいるのです。そのおかしさに、僕はいてもたってもいられなくなり、意識したかしてないか、彼らと少しずつ距離を取るようになってしまいました。遊びに誘われても、やんわりと理由をつけて断るようになりました。

 

それから瞬く間に時間は過ぎ、4年が過ぎました。友達たちは新卒1年目としてバリバリ働いています。いつかまた会えるだろう、そんな淡い希望を抱いて、僕はひとり就活に勤しんでいました。

 

ある日のことです。大手の商社に勤める、友達のA君がストーリーを更新しました。彼は早大を卒業したエリートです。そこには、一体何の集まりかもわからないけれども、「レセプション」とだけ文字の貼られた写真が上がっていました。赤い絨毯に、綺麗なシャンデリア。高級ホテルでの会合のようです。ドレスコードにきっちりかなうお洋服を着た友達がにこやかに、綺麗な女性の方と映っています。

 

すぐさま、A君のインスタグラムの投稿欄を見に行きます。そこには、大学のサークルや、課外活動、そして交際相手さんとの写真がいくつもありました。

 

おかしいじゃないか。ちょっと前まで、カードショップで一緒に遊んでいた仲じゃないか。お前に似合うのはこんな高級ホテルじゃない、こんなおしゃれな大学生活じゃない、お前は俺と同じ穴の狢だろう、そんなやりようのない、彼に対して理不尽な気持ちに一瞬で襲われました。

 

数秒後、私は一生の友達だと信じたA君に対して、そんな風に思ってしまったことを反省しました。そして、A君ではなく、僕がおかしいことに気付きました。ずっと高校時代の楽しい記憶にすがり、彼らとの関係を更新しなかった僕がおかしいのです。みんなが前を向いて成長しているなか、ひとり過去の思い出をすがるように懐かしんでいた僕が、おかしいのです。

よく考えてみれば、「友達」のA君のインスタグラムの投稿をそれまで見に行ったことが無かったのも、おかしいでしょう。意識したかしてないか、きっと、自分だけが遅れている事実を知るのが、怖かったのかもしれません。

 

フ―っと息を吐いて、彼の投稿のコメント欄を見てみます。どうも彼は大学を優秀な成績で出たようで、その投稿に「おめでとう~!」とコメントが付いていました。彼の返信は、「あざす」の3文字。昔の彼なら「ありがとうw■■も頑張ってくれよな~」なんて書いてくれただろうに。がっかりすると同時に、自分の停滞ぶりに悲しくなりました。思い立って彼にひさびさにLINEを送ってみると、当然会話は続きませんでした。本当に、自分だけが置いてけぼりになったのだな、と実感するようになりました。

 

「仲良しグループ」が突然終わったのではありません。A君が商社で血肉を入れ替えて別人になってしまったわけでも、決してありません。彼らとの関係を、A君たちは高田馬場や渋谷で未来へ向けてアップデートしようとしていたのに、それについていけなかった僕が、ひとりで脱落してしまったのです。

 

彼らと、もう一度仲良くできるなら、そうしたい。

 

それでも、僕は彼らと高田馬場や渋谷ではなく、カードショップやサイゼリヤで仲良くしたい。僕は、郷愁に勝てないのです。そして、そんな交友関係は、現実的にもう二度とありえないのです。

 

カードショップで過ごした日々に、さようなら。

 

おしまい